- 教員氏名
- 丸山 敦(まるやま あつし) 教授
- 学位
- 博士(理学)
- 学歴
- 京都大・院・理
- 専門分野
- 陸水生態学
- 研究課題(長期)
- 水域生物群集の環境応答にパターンをみつける
- 研究課題(短期)
- 水域生態学における簡便な調査手法の開発と活用
環境管理に対する社会的な要求が⾼まるなか、⿂類⽣態学の経験や知識を基に、⽣物群集の維持管理に求められる研究に取り組んでいます。とりわけ、社会が求める⽣態学的な情報を⼿早く提供できるように、新しい分析技術の開発・発展に寄与することを⼼掛けています。
環境DNA分析には、創成期(2010年頃)から携わる幸運に恵まれました。⿂も⾍も哺乳類も、⽣息環境にDNAを放出しながら暮らしています。そこで、⽔をすくって分析すればどんな⽣き物がどれくらい⽣息しているのか分かるのではないか、というのが環境DNA分析の発想です。これまで、さまざまな応⽤に取り組むなかで、この新しい分析技術の可能性を模索してきました。たとえば、飼育環境下でDNA放出の仕組みを調べたり、琵琶湖で⽔産資源の定量評価を試みたり、マラウイ湖や濃尾平野の多様性分布を調べたり、沖縄の海での希少種調査に取り組んだり・・・。環境DNA分析に対する社会的な関⼼が⾼まった現在は、むしろ楽観的な第⼀印象を改めて、より慎重で重厚な野外検証が必要だと感じています。
同位体分析にも、早く(1998年)から注⽬してきました。たとえば、マラウイ湖の⿂類群集の構造を調べたり、琵琶湖周辺の⽣物の動きを追跡する上で、この分析は⾮常に⼤きな⼒になりました。その⼀⽅で、⿂類の同位体⽐は置換が遅すぎて、他の⽣物と時間スケールが⼀致していない問題に気がつきました。従来通り筋⾁を使って同位体⽐分析をしている限り、移動や⾷性の季節変化によるノイズがあっても、それに気づくことすら出来ません。これに対して、粘液の同位体⽐は置換がはるかに早いことが分かってきました。しかも検体を⽣かしたまま分析できるため、同位体⽐分析の適⽤範囲を広げることができそうです。飼育実験によって必要な情報が蓄積できた今、琵琶湖の希少種の⽣態を明らかにする研究に応⽤しています。⽔域での⽣態学的研究の傍ら、江⼾時代のヒトの⾷⽣活の復元にもこの技術を応⽤できることが分かり、歴史を科学的に検証する共同研究にも⼒を⼊れています。
新しい技術を試す上で、湖として世界⼀多様な⿂類群集を育んでいるマラウイ湖(アフリカ⼤陸)は、申し分のないモデルフィールドです。そこで、環境DNA分析や同位体分析のほか、マイクロCT解析や⽔中ROVを使った調査なども、積極的に取り⼊れて研究しています。気がつけば、マラウイ⼤学との共同研究は1998年から継続しており、研究協⼒の協定締結はもちろんのこと、交換留学⽣の⻑期派遣、国費留学⽣の受⼊など、揺るぎない信頼関係が次の研究の糧になっています。