
樋口 三郎 准教授
[専門分野]
統計力学、教育工学
▼解決をめざす「社会課題」
私たちは、学校教育の概念にとらわれず、より広範な学習者層に対する質の高い教育機会の提供をめざしています。医師や警察官などのエッセンシャルワーカーや、さまざまな産業界で活躍する熟練労働者、ユーザサポートの担当者は、仕事に就くにも、仕事を始めてからも、多くの新しい知識・技能を学ぶ必要があります。このような学校教育外の学習者は、学校教育以上に多様で、一人ひとりの状況に応じたアドバイスや支援が必要ですが、これまでの教育システムではそれを十分に提供することはできませんでした。「一人ひとりにあわせた学習機会の不足」という社会課題に対して、テクノロジーを駆使した新しい学習支援の仕組みづくりが求められています。私たちは、より多くの人々が、時間や場所の制約を超えて、質の高い学びを受けられる環境を実現させたいと考えています。
学生たちは、1年半の特別研究をとおして、WebやChat、LLM、AIを活用した情報システムの開発に取り組みます。多様なメンバーで構成されるチームで協働しながら人々のコミュニケーションや共同作業、学習、教育を支援する情報システムをデザインし、ユーザからの評価にもとづいて改善を図っていきます。また、システムの基盤となる数学的概念への理解を深めつつ、高校や大学での数学に対する学習支援など、より踏み込んだ専門的な領域にも挑戦します。さらに発展的な取り組みとして、近年めざましい進歩を遂げている生成AIの大規模言語モデルを効果的に活用することで、学習者一人ひとりの状況に応じた最適な支援を提供する高性能な情報システムの構築にも挑戦します。参加する学生たちには、この取り組みを通じて最新の情報処理技術への理解を深めるとともに、社会課題の解決に向けた実践的なスキルを身につけてほしいと期待しています。
中村 公亮さん
数理・情報科学課程 4年生(大阪府 帝塚山学院泉ヶ丘高等学校 出身)
言語活動を重視した教材作成のため、基礎理論について研究しています。高校数学の教科書に載っている基礎的な定理の証明は、図を用いるなど発達段階に応じて簡素化され、所々不十分な点があります。そこで「三角関数の再定義」を最初の研究テーマに選び自主的に学修を始めました。現在、洋書の輪読を通じて厳密な証明を積み上げています。曖昧さを許さない厳密さの追究から、数学がより深く理解できます。また、メンバーとの議論を通じて、論理的な説明力が磨かれ、難しい質問にも根拠を明示して答えられるようになりました。数学の抽象論をとことん追究し、本質をとらえることで、わかりやすい授業を実践できる教師をめざします。