研究テーマ:有機合成を単純化する未来型触媒の開発
当研究室では「触媒的合成」をキーワードとして、画期的な有機合成化学の創出研究に取り組 んでいます。テーマは次の2つです。
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化学空間利用型分子触媒の開発:
酵素や核酸はそれぞれが作る疎水性空間を利用して活性種や反応中間体を安定化して、効果的かつ効率良く化学変換反応を普遍的に実施しています。合成化学者もこれに倣い、独自に化学空間を作り出して画期的な分子触媒の開発を目指してきました。しかしながら、その能力は未だ「母なる自然」が作り出す酵素や核酸などの足元にも及びません。一方で先人の努力により、「酵素触媒などがなぜそこまで効率良く反応を促進させるのか」「人工化学空間の機能をどうすれば改良できるのか」について、少しずつ新しい知見が得られてきました。このような背景のもと、我々のグループではキャビタンドと呼ばれる人工化学空間を独自に加工して触媒分子を作製し、これを使った環境にやさしい化学反応の研究に取り組んでいます。
- 異種炭素四置換アルケンのテンプレート合成法の開発:
アルケンとは炭素−炭素二重結合のことを言い、四つの置換基を持つことができます。この四つの置換基の部分に異なるタイプの炭素型置換基を持つアルケンのことを「異種炭素四置換アルケン」と呼びます。異種炭素四置換アルケンはこれまでにいくつか合成がされており、医薬品としての利用や有機材料としての応用が見いだされつつあります。従って、もっと自在にこのアルケンを作ることができれば、従来にない画期的な機能を持つ有機分子を人類は手にすることができると考えられています。けれども今までのところ、安く大量に安全かつ高品質に異種炭素四置換アルケンを作る手法は開発されていません。このような背景のもと、我々のグループでは単純なテンプレート分子を使った効率の良い合成手法の開発に取り組んでいます。