21世紀に入ってしばらく経ちますが、高度科学技術による便利さと経済発展を求めてきたこれまでに対し、科学技術のあり方がますます根本から問われるようになりました。特に地球環境問題など人類共通の課題に対し、人類の叡智を集めて対応することの必要性が叫ばれています。しかし長い時間の視野で当たるべきそうした課題に対し、ややもすると世界の足並みがそろわない中、このたびのパンデミックにおいては世界中が未曽有の急な対応を迫られています。今や、世界であたらねばならない人類にとっての喫緊の共通課題を突き付けられ、社会における技術の在り方を強く意識できるようになったとも言えます。もちろん科学技術開発により、以前には考えられなかった早さでネット上での会議や授業が実現できたり、いち早くワクチン製造が可能になったり、科学技術のおかげで問題解決に当たれることがわかった一方で、インターネットをはじめとする新たな技術により、人間そのものや社会の成り立ちにまで影響を与える問題も生まれています。
時代は今、こうした複雑で多様な問題に対し立ち向かえる骨太の人材を欲しています。つまり、ある分野の専門家というだけでなく、多分野に明るく、高い視点からさまざまな問題に対し、必要に応じて協調・協力しながら社会的モラルをもって創造的に当たれる人材です。理工学研究科では、本学建学の精神に基づき、以前から科学技術に携わる人間の役割の大きさと、責任の重大さを重視しています。まさにこの精神こそ今社会が求めるものなのです。ここにおいて本理工学研究科の果たす役割は重大です。大学院のパワーを量的にも質的にも高め、地球的課題に立ち向かえる技術開発、人材育成をめざします。
本研究科では、自然科学から工学までバランスよく幅広い6専攻を有しています。高度な専門知識を修得し、業界や官界との共同研究も含め、充実した実験装置や研究設備を用いて先端的な研究を進める中で、創造な思考で課題の発見や解決法を体験的に身に付けます。実際に国際的に注目される成果をあげている大学院生もいます。また本学理工学研究科の修了生は、技術者・研究者として様々な分野で活躍しています。
是非、本研究科の大学院課程では、自分自身の目標を持って、積極的かつ創造的にとことん取り組み、社会の求める骨太の人材に育ってください。
理工学研究科長
外村 佳伸