先端理工学研究科の源流は1993 年に設置された大学院理工学研究科修士課程、1995 年に設置された同博士後期課程に遡ります。前身の理工学研究科は、龍谷大学創立350 周年記念事業の一環として瀬田の地に1989 年に理工学部が開設されたことを受け、科学と人間の調和の重要性を自覚できる、高度な科学技術者の育成を目指して開設されました。以来、数多の高度人材を社会に送り出してきました。しかしながら、昨今、これまでの理工系分野の専門教育の課題として、専門分野以外の領域の学びを深める機会が少ない「タコ壺型の専門教育」となっていることが指摘されています。あらゆる場面で先端技術が活用されていくこれからの時代には、より広い視野が求められます。そこで、龍谷大学では、多様な学習ニーズに対応した「分野横断型の専門教育」を実現するべく、2020 年に国内理工系学部で初となる「課程制」を導入した先端理工学部を設置しました。この度の先端理工学研究科の設置も、専門深化型の学びに加えて主体的かつ分野横断型の学びを可能とする大学院教育の実現を目指したものであり、その実現に向けて前身の理工学研究科では6 つの専攻に分かれていた教育課程を1つの先端理工学専攻に融合した教学組織としています。
浄土真宗の精神に基づいて、自然・社会と科学との調和を重視し、幅広い教養と理工学の各専門分野における高度の専門知識・技能を身につけ、持続可能な社会の発展に貢献できる高い倫理観を持った高度専門職人材・研究者を育成することが本学大学院先端理工学研究科の目標です。
その目標を実現すべく、自分の専門とする研究分野のみならず周辺分野にも視野を広げて課題を見つけ出し、よく考えて解決していくために、深い専門性に加えて周辺分野での知識とその活用力を身につけてほしいと思います。また、浄土真宗の精神をよく理解し、社会的責任感や仏教に根ざした倫理観を育み、国際性を備えた高度専門職人材を目指して研鑽を積んで頂きたいと思います。理工学の研究においても、常に自らを検証しながら科学的な根拠に基づいて論理的に考える力を身につけてほしいと思います。
学舎内には、本学附置研究所のひとつである科学技術共同研究センターがあります。また産業界や官界との共同研究、委託研究および文部科学省の助成を得て、革新的材料・プロセス研究センター、古典籍・文化財デジタルアーカイブ研究センター、里山学研究センター、生物多様性科学研究センターが設置されており、大学院生がプロジェクト推進に大きく貢献しています。
「修士課程1 年修了制」、「博士後期課程1 年修了制」の制度もあり、既に、これらの制度を利用した修了生も社会で活躍しています。「修士課程1 年修了制」は、成績優秀な学部学生が修士課程入学後、1 年間で修了を目指すことができる制度です。また、「博士後期課程1 年修了制」は、社会人として活躍されている方々が、1 年間での博士学位の取得を目指す制度です。意欲ある皆さんをお待ちしております。
先端理工学研究科長
岸本 直之