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オートポイエーシスの概観

 

オートポイエーシスは、システムが生命体として成立するための枠組を、物理 的化学的過程から与えるものである。

オートポイエーシスは神経システムをモデルにして組み立てられている。マトゥ ラーナが問題とした神経システムは、色の知覚に関するものである。外部刺激 に対する視覚神経細胞の活動は、外部刺激の物理的特性に1対1に対応してい ないという実験結果がある。つまり、神経システムを外部刺激−細胞活動のス タティックな写像として見ると、実験結果が説明出来ない。こうしたことから、 神経システムはそれ自体の関連の内部でのみ活動しているはずだとマトゥラー ナは考えた。

マトゥラーナは生命システムは機械であると言明した上で、生命システムを定 義する有機構成 (Organization) とは何かを問う。そして、オートポイエーティッ クな機械こそ生命システムであると主張する。オートポイエーティック・マシ ンとは、「構成素が構成素を産出するという産出(変形および破壊)過程のネッ トワークとして、 有機的に構成(単位体として規定)された機械である。このとき構成素は、(i) 変換と相互作用を通じて、自己を産出するプロセス(関係)のネットワー クを絶えず生産し実現する、(ii)ネットワーク(機械)を空間に具体的な単位体 として構成し、またその空間内において構成素は、ネットワークを実現する位 相的領域を特定することによって自らが存在する」[1]。 マトゥラーナが与えたオートポイエーシスの特徴は以下の通りである。

  1. 自律性
    オートポイエーティック・マシンはあらゆる変化をその有機構成の維持へと統 御する。非オートポイエーティック・マシンの代表である自動車には自律性は 無い。
  2. 個体性
    オートポイエーティック・マシンは絶えず産出を行い有機構成を不変に保つこ とにより、観察者との相互作用とは無関係に同一性を保持する。非オートポイ エーティック・マシンの同一性は観察者に依存しており、それ自体としては個 体性を持たない。
  3. 境界の自己決定性
    オートポイエーティック・マシンは、自己産出のプロセスの中で自らの境界を 決定する。非オートポイエーティック・マシンの境界は観察者が決めるのであ り、境界の自己決定性はあてはまらない。
  4. 入出力の不在
    オートポイエーティック・マシンとは独立した撹乱により内的な変化が連続し ても、これらの変化はマシンを規定する有機構成の維持に従属する。従って、 これらの撹乱と変化の関係は観察の領域に属しているのであって、有機構成に 属していない。


Tatsuya Nomura
Fri Aug 22 19:05:39 JST 1997