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理工学部 電子情報学科 木村睦教授のグループがレアメタルフリーGTO薄膜トランジスタの開発に成功

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2017年3月23日

 アモルファス金属酸化物半導体(AOS)は、さまざまな応用が期待され、特にアモルファスIn-Ga-Sn-O(IGZO)を用いた薄膜トランジスタ(TFT)は、フラットパネルディスプレイのキーデバイスとなっています。ただし、IGZOはレアメタルであるインジウム(In)を含みます。Inの地殻埋蔵量は0.25ppmしかなく、資源の枯渇の心配や、産出場所の偏在による安定供給の不安があります。そこで本研究では、レアメタルであるInを含まないAOSを用いたTFTの開発を目指し、Inのかわりに元素周期表で隣にあるスズ(Sn)に着目しました。Snの地殻埋蔵量は2.2ppmであり、Inの9倍近くあります。また、Snがイオン化したときの電子軌道構造は、Inと同じであり、電気的な特性も維持できると考えられます。そして、Ga-Sn-O(GTO)を用いたTFTの研究と開発を行いました。GTO TFTは、性能の指標である電界効果移動度は25.6cm2V-1s-1と、IGZO TFTと同等以上で、オン/オフ比も108以上あり、アナログ回路などで必要とされる飽和特性の平坦性も良好です。光学特性は、400nm以上の可視光に対して透明、また、アモルファス構造をもつことが確認され、デバイス間やウエハ間の均質性が期待できます。ストレス試験では、負バイアス光照射ストレス(NBIS)で、GTO TFTの特性変動は、IGZO TFTよりも抑制されていることがわかりました。レアメタルであるInを含まないAOSとして、資源の枯渇の心配や、産出場所の偏在による安定供給の不安がない材料です。将来のAOSのさらなる広範囲の応用の可能性を拓く成果です。

■発表論文について
 英文タイトル: Rare-metal-free high-performance Ga-Sn-O thin film transistor
 和訳 : レアメタルフリー高性能Ga-Sn-O薄膜トランジスタ
 掲載誌: Scientific Reports (Natureのオンラインオープンアクセスジャーナル)
 著者 : 松田時宜(HRC客員研究員) 木村睦 他4名

<研究の背景>
 アモルファス金属酸化物半導体(AOS)は、エレクトロニクス・フラットパネルディスプレイ・パワーデバイスなど、さまざまな応用が期待されている材料です。特に、アモルファスIn-Ga-Sn-O(IGZO)を用いた薄膜トランジスタ(TFT)は、高精細大型液晶ディスプレイ(LCD)や、究極のディスプレイと言われる有機ELディスプレイの駆動素子として、不可欠なキーデバイスとなっています。ただし、IGZOは、レアメタルであるインジウム(In)を含みます。Inの地殻埋蔵量は0.25ppmであり、資源の枯渇の心配や、産出場所の偏在による安定供給の不安があります。
 そこで本研究では、レアメタルであるInを含まないAOSを用いたTFTの開発を目指しました。Inのかわりに、元素周期表で隣にあるスズ(Sn)に着目しました。Snの地殻埋蔵量は2.2ppmであり、Inの9倍ちかくあります。また、Snがイオン化したときの電子軌道構造は、Inと同じであり、電気的な特性も維持できると考えられます。そして、Ga-Sn-O(GTO)を用いたTFTの研究と開発を行いました。(分類としてはGaもレアメタルになりますが、地殻埋蔵量は18ppmあり、あまり問題にはなりません)


<研究の結果>
 本研究では、まず、GTOも、IGZOと同じく、スパッタ法で成膜できることがわかりました。スパッタ法は真空成膜のなかでは簡便で安価な成膜方法で、低コスト化に有用です。そして、GTO TFTの開発に成功しました。GTO TFTは、性能の指標である電界効果移動度は25.6cm2V-1s-1と、IGZO TFTと同等以上で、オン/オフ比も108以上あり、アナログ回路などで必要とされる飽和特性の平坦性も良好です。光学特性は、400nm以上の可視光に対して透明、X線回折の結果からアモルファス構造をもつことが確認され、デバイス間やウエハ間の均質性が期待できます。ストレス試験では、一般にAOSでもっとも厳しいとされる、負バイアス光照射ストレス(NBIS)で、GTO TFTの特性変動は、IGZO TFTよりも抑制されていることがわかりました。

<研究の意義と今後の展開>
 本研究では、GTO TFTの開発に成功し、電界効果移動度は25.6cm2V-1s-1と、IGZO TFTと同等以上を達成しました。レアメタルであるInを含まないAOSとして、資源の枯渇の心配や、産出場所の偏在による安定供給の不安がない材料です。将来のAOSのさらなる広範囲の応用の可能性を拓く成果です。

<発表論文>
 Rare-metal-free high-performance Ga-Sn-O thin film transistor
Tokiyoshi Matsuda, Kenta Umeda, Yuta Kato, Daiki Nishimoto, Mamoru Furuta, Mutsumi Kimura
Scientific Reports, 7:44326, DOI: 10.1038, srep44326
www.nature.com/articles/srep44326

以 上



図1.左図:アモルファス金属酸化物半導体の構成金属の地殻埋蔵量。インジウムに比べてスズは9倍近くある。右図:インジウムとスズの電子軌道構造。イオン化したときの電子軌道構造は同じ。
図2. GTO薄膜トランジスタのトランジスタ特性。電界効果移動度は25.6cm2V-1s-1と、IGZO TFTと同等以上で、オン/オフ比も108以上あり、アナログ回路などで必要とされる飽和特性の平坦性も良好。
図3. 左図:GTO薄膜の光学特性。可視光で透明。右図:X線回折。アモルファス構造をもつ。
図4. ストレス試験。もっとも厳しいとされる負バイアス光照射ストレス(NBIS)でGTO TFTの特性変動はIGZO TFTよりも抑制されている。

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