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理工学部 近藤倫生 教授の研究プロジェクトが わずか1日の調査で魚種の8割を検出 ~海水からのDNA解析法で~

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2017年1月13日

龍谷大学理工学部の近藤倫生教授が代表を務める研究グループは、海水中に含まれる排泄物などのDNAから周辺に生息する魚種を明らかにする新技術を使うことで、目視観察よりも効率の良い魚類生物相調査が可能なことを明らかにしました。
従来、海洋での魚類生物相調査は魚種を外見によって区別する潜水や捕獲のような方法に頼って行われていましたが、多くの人手が必要な上、魚種を区別する専門知識も必要としていました。この問題を解決する新しい魚類生物相調査法として「環境DNA多種同時検出法(メタバーコーディング)注)」と呼ばれる方法が注目されています。この新しい調査法は、魚が放出して海水中に存在するDNA(環境DNA)を回収・分析し、放出源となった魚種を特定するというものです。しかし、この調査法の有効性の確認は限定的なものでした。なぜなら、これまでは生息する魚種が少ない場所でしか検証されていなかったためです。日本沿岸のように魚種の多い場所では、従来法によって調査されたデータが乏しく、結果を比較できないためこの環境DNAメタバーコーディング法の有効性は未確認でした。
本研究グループは、京都府北部の舞鶴湾(図1)において、環境DNAメタバーコーディングを利用することで、現地調査(図2、3)をたった1日で行い、この方法によりその海水試料から128種もの魚類のDNAを検出することに成功しました(図4)。この128種には2002年から14年間、計140回の潜水目視調査(図5、6)で観察された種の6割以上が含まれます。ある年だけ偶然舞鶴湾へ回遊してきた魚種を除くと、8割近くを1日の調査で確認できたことになります(図7)。さらに、目視では確認されていない魚種も検出できました。目視では区別しにくい仔稚魚期を調査海域で過ごす魚種を、本調査法で初めて検出できたと考えています。
本研究で、魚種が多い場所でも、短期間で多地点の魚類相を環境DNAメタバーコーディングで調べることが可能なことが分かりました。広域にわたっての外来種の侵入や分布拡大の調査、さらには、アクセスが難しい深海や地底湖、危険な汚染水域や生物の採集が禁止されている保護区でも活用が期待されます。
本研究成果は、2017年1月12日(英国時間)発行の科学誌「Scientific Reports」に掲載されます。

■研究プロジェクトについて
事業名:   戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域:  海洋生物多様性および生態系の保全・再生に資する基盤技術の創出
研究課題名: 環境DNA分析に基づく魚類群集の定量モニタリングと生態系評価手法の開発」
研究代表者: 近藤 倫生(龍谷大学 理工学部 教授)
研究期間:  2013(平成25)年10月~2019(平成31)年3月


<研究の背景と経緯>
生物多様性を明らかにすることは、地域の生物相の保全や生物資源を管理する上で重要です。日本近海は世界的に見ても魚類の多様性が特に高く、これらを保全・管理する上で魚類相の理解は欠かせません。しかし、目視や漁具を利用する従来の魚類生物相調査は、多大な労力と長期間の調査に加えて、高度な知識をもった多くの専門家が必要でした。そのような問題を補完する方法として、排泄物などとして水中に放出された魚類のDNAを解析する「環境DNA多種同時検出法(メタバーコーディング)」が注目を集めています。この方法は、魚類生物相調査にかかる労力と時間を大幅に軽減でき、これまでの調査法では不可能であった短期間に多地点の魚類調査を可能にします。世界的にも、海や川をフィールドとした研究が行われてきましたが、種多様性の低い地域での調査研究や生物種を区別する正確さに乏しい研究でした。私達の研究グループは、これまでに魚類全体を網羅的に検出できるように本技術を大きく改良し、水族館の大水槽などで検証を進めてきました。しかし、目視や捕獲など従来の調査法に基づく比較可能なデータが無かったため、魚類相の豊かな日本沿岸での検証ができていませんでした。


<研究の内容>
今回、神戸大学、京都大学、北海道大学、龍谷大学、千葉県立中央博物館などからなる共同研究グループは日本沿岸のような生物多様性の豊かな海域で、環境DNAメタバーコーディングによって効率よく魚類相を明らかにできることを報告しました。調査対象とした京都府北部の日本海に面する舞鶴湾では、2002年から現在まで、2週間に1度のペースで潜水目視調査による魚類生物相データが京都大学の益田准教授によって収集されています。目視調査は漁具を用いた調査などと比べると、観察できる魚種が偏りにくく、魚類多様性を観察する方法として優れていると報告されています。本研究グループが環境DNA調査を行った6月を中心として4~8月の目視観察データ、合計140潜水分を集計したところ、この時期に舞鶴湾には80種の魚類が観察されることが分かりました。一方で、2014年6月18日に採水された計47地点の試料を用いた環境DNAメタバーコーディングの結果、計128種の魚類のDNAが検出され、そこには140回の潜水で観察した80種類の魚類の6割余りも含まれていました。潜水目視調査の結果には14年間でたった数匹程度しか観察されていない稀な種も23種含まれていました。年によって舞鶴湾に出現したりしなかったりするこれらの魚種を除くと、環境DNAメタバーコーディングを用いればたった1日で、これまで目視調査で観察された種の実に8割を検出できたことになります。さらに、これまで目視で観察されなかった魚種も20種以上検出することができました。これには、調査した6月頃に仔稚魚の状態で湾内に生息している魚種が含まれています。体が小さく、種の区別が困難な仔稚魚類は目視調査でも見落とされやすいと考えられます。また、その他にも河口の付近では淡水魚のDNAを検出でき、漁港の付近ではそこで水揚げされている魚類のDNAも検出できました。このことは本手法の検出力が極めて高いことを示します。魚類を網羅的に検出できる潜水目視調査のような方法で、徹底的に魚類生物相を観察したデータは海洋では極めて稀です。そのようなデータとの比較により、私達が開発した魚類の環境DNAメタバーコーディング法は、野外においても網羅的な魚類群集の検出を可能にすることが明らかになりました。


<今後の展開>
今回の研究で、日本近海のような魚類の種数が多い海域でも、わずか1日の採水とその後の分析で、14年の長期にわたる目視調査に匹敵する結果が得られることが分かりました。環境DNAメタバーコーディングを用いることで、「水を汲む」という単純作業によって「いつでも」「どこでも」「誰でも」魚類群集調査ができるようになります。この方法を使えば、今までの調査法では困難だった「多地点」「高頻度」の魚類群集モニタリングが可能になります。これは、近年日本でも大きな問題になっている外来種の侵入とその分布拡大のモニタリングを可能にします。さらに深海や地底湖、危険な汚染水域や生物の採集が禁止されている保護区など、アクセスの困難な水域でも活用することが期待されます。
 一方、現在では全ての魚種についてDNAデータが揃っているわけではないため、DNAを検出しても、そのDNAがどの魚種に由来するのかが分からない場合があります。研究グループでは環境DNAメタバーコーディング解析に必要な魚類のDNAデータベースの充実化によって、より幅広い魚種が検出できるように今も改善を続けています。


<参考図>

図1 舞鶴湾


図2 採水の様子
野外での調査は水を汲むだけで終了する。


図3 採水後の船の様子


図4 舞鶴湾の各採水地点で環境DNAメタバーコーディングにより検出された魚種数


図5 目視で観察できる魚類


図6 潜水目視調査の様子


図7 潜水目視調査で観察された種のうち、環境DNAメタバーコーディングでも検出された種

縦軸は14年間の調査で観察された各魚種の個体数。黒い棒グラフは環境DNAメタバーコーディングでも検出された種(40種)、白い棒グラフは検出されなかった種(25種)。目視調査では80種を観察しているが、現在のメタバーコーディング技術では仕組み上検出できない種を除いて、65種でグラフを作成した。



<用語解説>
注)環境DNA多種同時検出法(メタバーコーディング)
水に含まれる生物のDNAを解析することで、その水域に生息する生物種を特定するDNA解析法のこと。環境DNAとは水や空気、土壌などのサンプル中に含まれるDNAのことで、水の場合には魚類をはじめとした水生生物の排泄物や粘液、表皮などの細胞が水中に剥がれ落ちたものに由来するDNAが含まれており、それを解析することで生物相を明らかにすることができる。


<論文タイトル>
“Environmental DNA metabarcoding reveals local fish communities in a species-rich coastal sea.”
doi:10.1038/srep40368


<研究に関する問い合わせ先>
520-2194 大津市瀬田大江町横谷1-5
龍谷大学理工学部・教授 近藤 倫生(研究代表者)
Tel:077-544-7111 / E-mail:mkondoh@rins.ryukoku.ac.jp

山本 哲史(ヤマモト サトシ)
657-8501 神戸市灘区鶴甲3?11
神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 学術推進研究員
Tel:078-803-799 / E-mail:yamamoto@people.kobe-u.ac.jp

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